英国紀行 Ⅳ
初めてウェールズ地方へ
日本で買えるイギリスの観光ガイドブックのどれを見てもウェールズ゙についてはあまり書かれていない。あるいは皆無といってもいいのではないだろうか。唯一、首都のカーディフについて少しだけ記述がある程度でほぼ役には立たない。では行ってみるしかないということで今回はウェールズに足を伸ばしてみた。事前に分かっていた情報としては、イギリスの中にありながら言語の違う地域であること。歴史のある地域であること。それからわたしが好きな映画「わが谷は緑なりき」の舞台が19世紀末のウェールズの炭鉱地帯だった。それだけ。
高速道路のM5を西へ西へと行くと最果ての地という感じでウェ-ルズに入る。予想通り、地名や道路標識の文字は上が英語、下がウェールズ語というふうに二段書き。ウェールズ語はまったく読むことができない。そう言えば、本日泊まる予定のホテルもアルファベットの綴りと読み方に関連性が見られなかったなあ。
一般道に入ると標識の2段書き以外はイギリスの普通の長閑な田園地帯が広がる。ただ一つ、大きな違いは、古城が多いこと。しかもそのほとんどが朽ちるに任せている感じ。一応、展示的なものがある城もあるが、危ないから近寄るなという表示のみで廃墟になっている城。取ってつけたように芝生が綺麗に植えられている城。ヘイという町では城跡の中が古本屋というものまであった。日本と違って、城を残すために不断の努力が必要というのでは無く、ただ城が残ってしまったという扱い。前に聞いたことがあるが、城や石垣の石は大抵は近所の人が持ち帰って、家に使ったり農場の石垣に使ったりと収奪されていったようだ。確かに、城跡を見ると高い塔の部分は残って、下の塀のあたりはほとんど残っていない感じで、手の届かない高いところはさすがにあきらめたんだなと思わせる。そして放棄された残りが城跡として現世にその朽ち果てた姿をとどめている。確かにわたしも初めに古城あとを見つけた時は少しばかり興奮したが、次々現れるとすぐに食傷気味になり、それほどありがたみを感じなくなったのだから地元の人は推して知るべしといえるだろう。
あと、変わったところでは、車で進んでいると木製の古い橋が現れた。車が上を通るとギシギシと音を立てる。
すぐに映画の「恐怖の報酬」を思い出した。積み荷は液体のニトログリセリンではないが、橋が落ちれば買ったばかりのパソコンが水没して使いものにならなくなると心配しながら渡り終えると、そこには、この橋は私が作って守ってます、とは見えない笑顔のおじさんが通行料を徴収している。80ペンスだから約100円を支払い、無事終了。切符はノスタルジックで良いデザインでした。
ヘイの町は町全体がアンティークマーケットで成り立っているようなところ。とりわけ古本屋がたくさんあり、重さや大きさを気にしないのであれば、どれほど日本に持って帰りたくなるほど素敵な装丁の本があることか。ここは我慢するしかない。
古本屋さんの中でも特に気に入ったのが「オネスティ・ブックショップ」。つまり「正直者の本屋さん」といったところか。古城の前庭を利用して良くいえば青空市。悪く言えば雨ざらしの本屋さん。
40年前に出版された子供用の百科事典などがたくさん置いてありました。
そのほかにも、ボタニカルアート専門の絵のお店などヘイの町はゆっくりと楽しめる町でした。時間の関係でお昼過ぎには移動しなけらばならなかったのですが、また機会があればゆっくりと散策したいところでした。