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ピーター・F・ドラッカー 生誕100周年

ドラッカーについて思うこと


最近、ピーター・F・ドラッカーに関する本の出版物をよく目にします。生誕100周年という節目だそうです。経営の神様ドラッカーについて多くの人がその奥の深さについて経験と実践から述べておられます。私も意気盛んな新入社員だった頃にその本のいくつかを読ませてもらいました。

 

私がドラッカーについてまず一番に思い出す出来事があります。大学を卒業した私は大阪の繊維会社に入社して人事部の配属になりました。早速、次の年、つまり私の一年後輩にあたる新入社員の採用や教育の担当になりました。入社式の段取りの中に、社長から新入社員に向けての「訓示」の原稿書きがありました。その当時、ドラッカーに大いに影響(中身は十分理解していないのは勿論)を受けていた私は訓示の内容にドラッカーの教えをたっぷりと入れ込んでいました。そんな訓示の原稿を秘書室に上げて、2、3日後、突然人事担当役員の常務が血相を変えて私を呼んできました。訓示の内容で担当者に言いたいことがあるとのことで、あわてた様子の常務と血の気の引いた顔の人事部長と、ことの重大性に気づいていない新入社員の私はまさに雁首を揃えて社長室へと向かいました。



社長室の見たこともないほど大きくてそして深いソファに遠慮がちに浅く座った3人に社長は笑顔で言いました。

 

 「これを書いたのは君か?」

 「ハイ、そうです。」

 「きみはよく勉強してるね」

 「イエ、恐れ入ります」

 「よく書いているけど、これは私の言葉とはニュアンスが違うから

僕の言葉で言い換えて話していいかね」

 「ハイ、勿論でこざいます」

 「せっかく書いてくれたのにすまないね。ありがとう」


だいたいこんな会話で終わり、常務が重ねてお詫びの言葉を述べられ私たちは社長室を後にしました。常務はしきりに社長の寛容さを褒めておられ、お咎めなしの安堵感から私に対するお叱りも忘れてしまっている感じで、その後の入社式も無事終了となりました。


当時、グループ会社も合わせて12,000人の大会社の社長とはこういうものなのかと思った私は、懲りずに今度は新入社員全員に自己啓発の一環としてドラッカーの「現代の経営」を配りました。それから何年かはこの配布を続けたので当時若い社員の自宅には必ずドラッカーの「現代の経営」が置いてある状態でした。


今、私はほんとに小さいながらも一応会社を経営する立場になりました。

規模は依然の会社の1000分の1ですが、ドラッカーの教えの中で一つ実践してきたことがあります。それは「顧客の創造」です。英国スタイルの花屋さんは開業当時としてはまだ少ない存在でした。英国好きの私はイギリスの文化やライフスタイルを提案する花屋さんをしたいと思いました。当時、そのニーズがあるかどうかはわかりませんでした。でもこの提案によりそのスタイルが好きになる人が出てくることを望みました。そういった顧客が生まれて私の店に集まってくれれば思いました。今でも道はまだまだ半ばですが、できる限り既存の踏襲ではなく新しい文化の提案を続けることで「顧客の創造」を目指していきたいと思っています。


ドラッカーの言葉に「真実の瞬間」というのがあります。私は優れた花屋さんには3つの連続した「真実の瞬間」があると思います。お客様の期待を超えるお花を作った時には、まずそれを取りに来たお客様が笑顔で「きれいに作ってくれてありがとうございます。」という瞬間があり、そのお花を相手にプレゼントしたときに、相手から笑顔で「きれいなお花をありがとう」といわれる瞬間があり、再びお客様がお店にやってきて「この前のお花、とっても喜んでもらえたの」と笑顔でお礼を言ってもらえるという瞬間があります。この連続した「真実の瞬間」を繰り返せる花屋さんが真の優れた花屋さんだと思います。


そういったことを改めて思い出して、また気持ちを引き締めるきっかけのドラッカーの生誕100周年です。

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