モンティパイソンについて
私の英国かぶれはどこから始まったのか。
「小さな恋のメロディ」「ビートルズ」「サンダーバード」。英国に興味を持ち始めるきっかけはたくさんありますが、やはりNo.1と言えるのは「モンティパイソン」です。
正確には「モンティパイソン・フライングサーカス」。このブログを読んでいただいてるありがたい方々はどれだけこの名前をご存知でしょうか?1969年にスタートした(なんともう40年前)コント番組です。終了は1974年で、今はやりのアメリカンドラマの言い方だと「シーズン4」まで続き、全部で45回の放送がありました。日本では1976年から毎日放送(関西では)の深夜に放送されていました。(そう、「ロックフォードの事件メモ」の後です) 私の知る限りではこの英国製のコント番組に「はまった]有名人は、「ビートたけし」さん、「関根勉」さん、爆笑問題の「太田光」さん、ワハハ本舗の主宰者の「喰始」さんとかです。コント番組なのでお笑い系のタレントさんが中心ですが、明らかにちょっとマニアックな人が多いように思います。そういえば「ドリカム」の歌の歌詞にも出てきたことがありましたけど、とにかく知る人ぞ知る古典的コント番組です。
この番組にまだ中学校に入りたての私は完全にはまってしまったんです。知らない方のために簡単に説明しますと。メンバーは6人。オックスフォードかケンブリッジ大学を卒業したインテリイギリス人5人とアニメーターのアメリカ人1人からなります。主に社会風刺を主眼に置いて更にゲイや上流階級などにもその風刺の矛先を向け、国営放送のBBCにおいて放送されているのがウソのようなハチャメチャなコント番組です。放送終了後も何本かの映画が作られ、そのどれもが独創的で楽しいものです。
残念ながらメンバーの一人「グレアム・チャップマン」は1989年に亡くなりましたけど、他のメンバーは今でも活躍中で、背の高い「ジョン・クリーズ」は英国の古典的なホームコメディドラマ「フォルティタワーズ」に出たり、最近では映画「シュレック」のフィオナ姫のお父さんの声で出演しています。音楽の才能も豊かな「エリック・アイドル」は最近ではブロードウェイのミュージカルでかつてのパイソン映画をベースにした「スパムロット」を演出上演したり、身近なところでは「東京ディズニーランド」の「ミクロアドベンチャー」の表彰式の司会者役で顔を出したりしています。彼の「ビートルズ」をベースにしたパロディバンド「ラトルズ」のアルバムは今でも時折聞いて楽しんでいます。
40年たった今でもモンティパイソンが愛される理由(全集BoxDVDが発売後すぐに完売してしまい、今年の1月にはなんと4回目の再発売、しかもそれもすぐに完売)とは。私の「想い」で説明すると、まず計算されたコント(スケッチと呼んでます)、歴史や政治や国、人種、職種、同性愛などいろいろな対象を痛烈に面白がってパロディにしていること、そしてその一つ一つのスケッチを高度な手法でリンクさせて1回30分の番組にしていること。日本特有の「楽屋落ち」や「単純なトチリやアクシデントを笑いに利用」を使わずに、完璧にそして完全に演じきっていること。そしてある程度の世界の歴史や政治、音楽について見識がなければ面白さを理解できないこと。更に、そのスケッチを考え出している作家がそのまま自らそのスケッチを表現していること、などが挙げられます。
私の高校のときに仲良くなった親友も、少し経ってからお互いに「モンティパイソンマニア」であることがわかって更に理解しあえたことを思いだします。今でも、何かの拍子に「マニア」であることが分かり、お互いに「なるほど」と納得する人に出会う場面が稀ですがあります。
先ほどご説明しましたとおり今でもDVDでモンティパイソンの全作品を見ることは可能です。またベスト盤も何度がでており、最近では2006年に「パーソナルベスト」と題してメンバーの一人一人が自ら推薦するスケッチを自ら出演し紹介(悪ふざけをしながら)した6枚組のDVDが出ています。かなりおじいちゃんになってきた5名の近況を見ることができます。
ここで私の好きなスケッチをひとつ。「怪盗デニスムーア」。富める者から奪い、貧しき者に与える「義賊」のデニスムーアが金持ちの乗る馬車を二丁拳銃で無理やり止め、差し出すように命令するものは「お金」ではなくなぜかイギリスの春に咲くお花「ルピナス」。さらになぜかお金持ちたちは馬車の中から色とりどりのルピナスを出してきます。奪ったルピナスは貧しき夫婦のところへ。テーマ曲に乗って勇ましく駆け抜けていくムーアはやがて、夫婦から「ルピナスでは生活できない!もっと金目の物を盗ってきて!」と言われてしまう。
金持ちから、宝石や衣装や金目のもの奪っては貧しい夫婦に運び続けるデニスムーアはやがて、金持ちにはもう何も奪うものは残ってなく、貧しかったはずの夫婦は煌びやかな衣装を身に着けお金持ちになっているのを見て一言、「富の再配分は難しい」。これって、「共産主義」のパロディです。
残念ながら、今の日本のテレビではこの「モンティパイソン」を再放送することは不可能だそうです。内容的に放送コードに触れる表現がいっぱいでだからです。30年前の放送時にも、ジョンクリーズの「Silly Walk」(バカ歩き)がカットされたことがありましたけど、現在ではほとんど放送不能なものばかりです。だからこそ伝説になっていくんですね。