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イギリスの牛乳

私は牛乳が好きです。イギリスの牛乳が好きです。詳しく言うとイギリスの「パスチャライズド牛乳」が大好きです。





もともと小さい頃からの牛乳好きで(だから身長が伸びたんだとずっと思ってました)、それは今も変わらないんですけど、イギリスに住んでいた時に、行きつけのスーパー(セインズベリー)に置いてある牛乳を買ってきて初めて飲んだ時のあの妙な感覚は今も忘れられません。

こんなにコクのあるそして深みのある、なのに後味のすっきりした牛乳があったのか。ラベルには「pastuarized」の文字が、実はこれはこの牛乳の処理法を見つけた細菌学者、あの「ルイ・パスツール」に因んでいるんです。日本ではしばしば「低温殺菌」と呼ばれていますが、イギリスではこの低温殺菌が当たり前なんです。


やがて隣のバーバラおばさんに教えてもらった定期配達のミルクマンにお願いして、1日おきに宅配してもらうことになったんですけど、これが瓶入りで更に美味しい。通常のシルバーラベルとさらに脂肪分たっぷりのゴールドラベルを加えて私の牛乳ライフはとても充実していました。ゴールドラベルは文字通りゴールドの蓋が付けてあって、その蓋をおもむろに取り、そしてお気に入りのマグカップ(カタログ販売のアルゴスで買ったもの)に注ぐべく瓶を傾けたとしても、すぐには牛乳は落ちては来ません。ビンの口の周りのたっぷりの脂肪が邪魔して落ちてはこないんです。この脂肪分はあらかじめスプーンで取っておいて、これをアイスチョコレートケーキにかけて食べるとまたこれが美味しいんです。この技は友人のエレーンから教えてもらいました。


飲んでしまった牛乳は、空瓶を玄関に置いておくと、その分だけミルクマンが新しい牛乳と交換してくれるので無駄がありません。そのうえ、このミルクマンの車は電気自動車。まだ明けきらない暗い朝の通りを、音もなく進んでいくミルクマンカー。聞こえるのはかすかなビンの擦れ合う音だけ。朝の静けさの中に幸せを運ぶ音楽です。


イギリスでは、毎日飲むのは「パスチャライズド牛乳」で、あまり買い物に行かない無精者や料理用に使う時だけの「高温殺菌牛乳」と分かれているのに、日本では毎日飲むのは「高温殺菌」、高級な牛乳は「パスチュライズド(低温殺菌)牛乳」とぜんぜん違うんです。私たち日本人は実はそのことを知らされていないんです。


高温殺菌はもともとイギリスでも不衛生な植民地での牛乳の処理方法なんだそうです。ただ、これについて詳しく書くと特定の会社や団体の悪口になる可能性があるので、私のブログでは書きませんが、一言だけ申し上げると、本当に質の良い牛乳からしかできないのが低温殺菌牛乳なんです。


先月の新聞に、牛乳の原料になる生乳の価格について生産者団体が値上げを求めているのを大手牛乳各社は拒否しているという記事がありました。飼料価格は上がり燃料も上がりました。このままでは本当に良い生産者が経営できなくなります。牛乳の消費量は年々落ちてきているようですが、本当に美味しい牛乳を提供すればもっと消費は伸びると私は思っています。


安いものばかりを追い続けた我々日本人は(多分にそう仕向けられたようにも思いますが)、結果として食の偽装や危険に曝されています。良いものを適正な価格で買う「目」を持つことの大切さを感じます。因みに、生乳価格はこの春、3%だけ値上がりしました。これは30年振りだそうです。生産者の方々の苦労は並大抵のものではなかったと推察します。


以前に比べて、最近ではスーパーでもよく「低温殺菌牛乳」を見掛けるようになってきました。ただこの温度も徐々に上がってきているように思います。私は殺菌温度63℃、殺菌時間30分の味が好きです。ところが最近は65℃が主流になってきており、さらに66℃のものも出てきています。この1℃の差が実は大きな味の差になって出てきます。


そんな中でも私が好きな国産の牛乳は「京都のクローバー牧場の特別牛乳」「ノンホモ飛騨牛乳」です。この二つの品質は高く、今手に入れることのできる牛乳の中では一番、イギリスの「パスチャライズド牛乳」に近い味がします。「飛騨牛乳」は紙パックではなく瓶入りであることも良いです。ただ、どちらも値段が高いことから、スーパーでも取り扱いを中止することが多く、京都の特別牛乳は今では近くで手に入れることができません。この牛乳は唯一62℃30分のものだったので残念です。これらの牛乳をミルクティに入れるととても美味しく飲むことができます。因みにカップには先にミルクを入れることをお勧めします。


下の写真はガルゲイト村にある牧場の「牛乳の無人販売所」です。朝早くにおじさんが牛乳を補充しているところです。ここで、美味しい新鮮な牛乳を2リットル2ポンド(今日のレートで320円)で買うことができます。





最初の写真はこの日私がこの無人販売所で買った牛乳の写真です。普通は無人なんですが、この日は時差ボケの私が早朝に行ったので、おじさんに会うことができました。会えた喜びと美味しい牛乳が手に入る幸せで満面の笑顔でおじさんに話しかけて2ポンド支払ったのですが、あっさりと今度はこの箱(入金用の木製の箱)に入れてねと言われてしまいました。ですがこの2リットルの牛乳を一人で飲みほしました。飲みごたえはありましたけど満足です。


日本も、気軽にそして手軽に美味しい牛乳の飲める国に早くなってほしいものです。

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