スペインとギリシャの友人
英国留学の思い出
初めてイギリスに留学で行ったのがちょうど20年前になります。つまり20周年です。特に何かお祝いをするわけではありませんが、留学がわたしの人生を変えたことは紛れもない事実ですので、当時お世話になった多くの方々に、深く感謝しています。
20年前のちょうど今の時期のことです。7月の暑い時期に、生まれて初めて英国に渡りました。まずは大学のなかの語学学校で入学の準備をしました。世界中からやってきた留学生が同じクラスで英語の勉強をするこの期間はもっとも刺激的で楽しい2か月間でした。
数多くの国の学生の中から、わたしは、たまたま、ギリシャ人のニコスとスペイン人のフランシスコという二人の留学生と仲良くなり、授業中も放課後もいつも三人でつるんでいるという感じでした。フランシスコは他のスペイン人の留学生たちのリーダー格だったので、よくスペイン人の集まりやパーティにも参加させてもらい、本場のサングリアを飲みながら学生気分で大学生活を楽しんだものです。
悪友という感じで毎日一緒に、女の子の噂なんかをしながら遊んでいたのです。日本人もスペイン人もそしてギリシャ人も、同じ年頃なら考えていることも、興味の対象も似たようなもんで、お互いに使い慣れない英語で楽しく過ごしました。
ただ、そんな日々の中でも、一緒に遊んでいても必ずフランシスコとニコスは他のスペイン人の連中と、昼過ぎになると「シエスタ」と言いながら、ブランケットを寮の中庭に持ち出して昼寝を始めるのです。これを毎日欠かさずやるんです。日本人のわたしには「シエスタ」の習慣はないので、この時間帯は、わたしは仕方なく一人で図書館に行ったり、他の友達と話しをしたり、そんな時間を過ごしていました。必ず昼寝をして休憩する彼らの習慣に驚き、そしてその大らかさに感心したものです。結局、頭が良くて勤勉なドイツ人の友達ができて、必死に勉強しなければならない立場のわたしは、一緒にまじめに勉強していくようになりました。そして二人ともサマースクールが終わるとそれぞれに国に帰ったり他の大学へと離れて行きました。
今、EUの経済危機が叫ばれているこのとき、その元凶というべき、EU経済の足を引っ張っている国はギリシャとスペインだそうです。なるほど、そりゃそうだろうと納得できます。毎日昼寝するような国民が経済的に発展するのは、ちょいと難しいだろうと。でも彼らはとていい奴ですし憎めない奴です。一緒に遊ぶには楽しい仲間でした。でも一緒に勉強するにはちょっと刺激が薄い友達でした。
あのせまいヨーロッパの中には全く国民性の違う人々が隣同志で住んでいます。仲良くするのはよいでしょうが、一緒に経済圏を作るにはちょっと難しかったのではないでしょうか。無理してEUに入って、やっぱりという感じで破たんして、そして今度は慣れない「超緊縮財政」を強いられるギリシャ人。半分の国民が嫌がるのも無理のない話です。責任は、ギリシャをEUに入れたドイツやフランスにあるのではないでしょか。ギリシャ人をそっとしておけば良かったのに。
ギリシャ人のニコスは毎日のように彼女に手紙を書いていました。ネクタリンという名前(日本語だと桃子)の彼女宛の手紙には必ず、いつも使っているコロンを振りかけていました。そんなニコスを見て、フランシスコと大笑いしていた時が懐かしく感じます。今は音信不通ですが、ニコスは今、「緊縮政策」に賛成派なんでしょか、反対派なんでしょうか。元気にしているんでしょうか。
あれから20年です。