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英国紀行 Ⅱ

ガルゲイト村のB&B


ガルゲイト村を訪れるとき、最近、定宿にしているB&Bが、この「ストーク」である。以前は違うB&Bで「ハンプソンハウス」というホテルを利用していたのだけど、カナダ人のオーナーが10年前に閉館してしまったので仕方なく「ストーク」を利用し始めた。正確にはストークはガルゲイト村ではなくすぐ隣のガルスタング村にある。





カナダ人のやっていたホテルは大きさは結構な規模で部屋数も30室以上はあっただろうか。だが晩年になると他のゲストに出会うことも少なかった。


最後に泊まった時、朝早く、朝食を食べようとダイニングに降りていくと、その日は珍しく先客がいた。インド人のビジネスマンは、なぜこんな田舎のこんなB&Bにいるのか困惑するほどパリッとスーツを着て先に食事をはじめていた。


わたしがダイニングに入っていくと、さもわたしを待っていたような笑顔で手招きし、わたしを彼の前の空いている椅子に座らせてくれた。そこからはとめどない会話が続き、といってもインド人の独壇場であるが、ひとしきり話し終えると満足したのか、「お先に」と去って行った。


あとに残されたわたしは、やっとこれでゆっくり朝食が食べられると思ったら、こんどはカナダ人のオーナーが笑顔で話し始める。内容は愚痴ばかり。せっかく買ったこのホテルも客足は遠のき、最近ではどうしたものかと考える毎日。こんなはずではなかったのにと、やがて笑顔が曇るばかり。以前、ローズグローブ・ストリートに住んでいたことを告げると、ちょっと待ってと手で合図をし、しばらくしたら60歳代のルームメイドサービス担当のおばさんを連れてきた。そしてそのおばさんに彼を知っているかと私のほうを指さすのだが、おばさんは困った顔をして、知りません。聞くと私の住んでいた家の向かいの家の3軒隣ということ。私も見たことない人なので向こうも知らなくて当たり前かと。


やがてそのちょっと白けた雰囲気の中、わたしはダイニングを出て行ったのでした。最後の思い出がそんな感じで、次の年には閉館してしまったのでした。後は、建物はそのままで入り口の石の柱に「PRIVATE」という看板がかかっていて、人の気配はしませんでした。そこの庭では必ず野ウサギに出会うことができて、自然な庭がくつろげるお気に入りのB&Bだったので残念です。


今回、思い立ってその場所に行ってみました。なんと、ちょうど建物を壊していってる最中。パブスペースだった建物が、すでにその形をとどめてはいませんでした。






ガルゲイト村にある数少ないB&Bの一つだったハンプソンハウスが建物もなくなることはショックでした。あのカナダ人のオーナーは今頃どこにいるのでしょうか。その日の夜のストークは、一人部屋の中にいて、下のパブの喧騒を聞きながらドイツワインをちびりと飲みながら過ごしました。

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